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栄養士による健康のためのストレスセルフケア

生物学的に人間に適した食事とは?「スリムになって若返る7つの発見」より

 

「ファスティング」という言葉を最近よく耳にするようになりました。プチ断食として野菜と果物のスムージーだけで数日間過ごす方を見かけるようになったのは、以下紹介する本の理論が裏にあるのかなと思います。

 

「『スリムになって若返る7つの発見』ハービー・ダイヤモンド(1998年)」

  

 

概要

 

『人間は本来肉食ではない』

わたしたちの歯の発達を見る限り、人間は果物や野菜を食べて成長してきた生物であるという理論をもとに説明展開しています。肉、牛乳、卵などは本来不要であり、これらを食べるから太ったり生活習慣病になるのだという主張です。(その他、消化にいい食べ合わせの紹介も書かれていますが、ここでは割愛します。)

 

そこで、本来わたしたち人間に適した食事とは何なのかを栄養指導の歴史と共に振り返ってみました。 

栄養指導の遍歴

日本の栄養指導

女子栄養大学創立者の「四群点数法」の考案者である香川綾先生ですが、戦前1928年頃は「主食は胚芽米、魚一、豆一、野菜四」という標語で活動をされていました。

白米を中心とした食生活で脚気にかかる人も少なくなかったため、栄養バランスを整えるねらいがあったようです。ここには牛乳、肉、卵という言葉はありません。食べていないわけではないようですが、当時の一般家庭料理として、肉は少なく魚の頻度が多かったようです。

戦後、困窮状態の日本国民へ「ララ物資」、ユニセフから脱脂粉乳が送り届けられます。脱脂粉乳が学校給食で飲まれだした頃、児童の栄養状態改善を目の当たりにし、1948年頃から乳・乳製品を栄養指導内容に含めるようになりました。

さらに1953年頃には「七つの食品群」として「乳・卵」を独立させますが、「肉」といういわゆる豚肉、牛肉、鶏肉を指すような言葉はまだ登場していないようです。(「魚肉」という言葉はあるのですがイラストは魚の絵のみであり、畜肉と解釈するには不十分と判断しました。)その後、高度経済成長期に肉ブームがおこり消費量が増え、1958年頃に発表された「四つの食品群」の中に「肉」という言葉が登場するようになります。(1954年頃からアメリカ農務省資金によるキッチンカーと呼ばれる栄養指導車による指導が始まり、食の欧米化がより進んだとも読み取れるかなと思います)

現在知られる四群点数法は1973年に命名され、「乳・乳製品、卵」「魚、肉、豆製品」「野菜、イモ、果物」「穀物、油脂、砂糖」の4つのグループにわかれています。

食卓に肉料理は定着し、2006年には肉類が魚介類の摂取量を抜きました。

(参考:平成28年度第16回企画展示|香川昇三・綾 記念展示室)

  

アメリカの栄養指導

一方、アメリカ農務省によるの栄養指導歴史はどうなっていたのでしょうか。アメリカの食生活が戦後の日本の食生活に影響を与えていると考え、調べました。

アメリカの農務省(USDA)の指導は1943年~1956年に「Basic7」として「緑黄色野菜」、「オレンジ、トマト、グレープフルーツ」、「イモとその他野菜果物」、「乳・乳製品」、「肉・家禽・魚・卵」、「パン・小麦粉・シリアル」、「バター、強化マーガリン」の7つのグループを発表しました。

1956年~1992年に「Basic Four」を発表しています。「乳」「肉」「野菜・果物」「穀物」の4つのグループに分けています。

   

栄養士としての見解

今時点でのわたしの意見をまとめると、「著書に書かれていること全てを受け入れるわけではないが、50%くらいの気持ちで食生活の変容をしてもいいかもしれない」という答えです。

一理あると思うところもあるのですが、たんぱく質源として日本人は主に魚を食べてきていることと、DHA・EPAが含まれるなどいい点があるので、魚に関してはゼロではなく食べたほうがDNA的に身体に合うのではないかと考えます。肉・卵・牛乳の摂取頻度は軽く見直してもいいと思います。

 

<本を参考にした、現時点でのわたしの見解>

・日本人は肉より魚をメインに食べてきているので、たんぱく質源として肉控えめ、魚や豆を食べるようにする。

・牛乳、卵は控えめにし、牛乳のかわりに豆乳や小松菜からカルシウムをとる方向にしてみてもいいかもしれない。

 

<参考図書>

「数字で見る日本の100年 (改訂第7版)」 矢野恒太記念会

 

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 注意してほしいこと

  ・朝は果物だけという習慣はアリかもしれない。(実践してスッキリした感覚があった)ただ、果物は30分~1時間程度で消化される。特に糖尿病の治療中の方は低血糖になる心配があるため、継続的に補食できる条件下でないなら実践を控えるのが無難だと思う。

・体内のバランス的に塩分は適度に摂ったほうがいいので、素材の味のみで実践しようとしている方は塩分不足にならないよう注意。

※高カリウム血症、低ナトリウム血症にならないかという点が心配です。「程度」の問題になりますが、いきすぎた食事になると、身体にいいモノのはずでもかえって病気を招いてしまうことがあります。薬と毒は匙加減です。

 ・野菜を生の状態で食すことは、手放しには認められない。具体例が書かれていないのでここで補足するが、ほうれん草やたけのこ等、尿路結石の原因になるシュウ酸が含まれる野菜は茹でたほう身体のためだと考えるからである。(激痛で本当に辛いらしいので、危険因子は除いた方がいいかと)また、食品衛生上、よく洗うよう注意してもらいたい。

おわりに

今回は栄養の歴史を振り返ってみましたが、人間は時代状況に応じて遺伝情報を変えていく生き物なので、次世代はより好条件の身体構造へとすこし進化するかもしれません。人種や性別の違いや家系によって、身体の構造やかかりやすい病気が違います。

情報を元に自分で解釈し折り合いをつけてどの部分を採用して実践していくか、逆にどの部分は自分には合わないと捨てるかをバランスをとって判断できる力が大事だと思います。本質を理解し信条・文化や性質を踏まえたうえで総合的に判断していきたいです。